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「貴様ぁ!なぜお前だけ!!」
毎朝、食堂で繰り広げられる朝の日課。
朝から大声でわめくイザークに、それを制止するディアッカ。
そして…。
「あ、アスラン。お早ようございます」
「おはよう、ニコル」
毎朝この騒ぎに巻き込まれるアスラン。
「イザークも毎朝よくこりませんね」
僕の隣に腰を降ろしたアスランは、まだ後ろで騒いでイザークを無視してフォークを手にした。「ほんとに、な。はぁー」
「アスランも大変ですね…」
隣から聞こえる重いため息に、苦笑するしかない。
「今日は何につっかかってきたんですか?」
「ん?いつも通り、くだらないことさ。ほら」
そう言って差し出されたアスランの皿には黄色い固体が二つ。
「アスランのおかずだけ卵焼きなんですね」
今日の献立は目玉焼きのはずなのに、なぜかアスランだけ違っていた。
むろん、僕や他の人の皿には目玉焼き。
「多分卵割るの失敗したんだろう」
普通に推察すればそうなのだろうけど、その卵焼き、よくよく見ると中にはチーズが、生地は卵だけでは出せない色と艶。そして極めつけは上にかかっているケチャップ。どう見ても軍の食堂では出なそうな、トマトの形の残るケチャップ。
あの食堂の女性はアスランに特別な想いがあるのだろう。イザークが怒ってるのはそんな女性の想いに応える以前、まったく気づかないアスランの鈍感さに腹を立てているんだろう。
「そう、そう、アスラン。家からおいしい紅茶送られてきたんですよ。よかったら後で部屋に飲みにきませんか?」
「ああ、そうだな。食事の後にでもよせてもらうよ」
鈍感なアスランも、僕の誘いに先程までの険しい顔が一変して穏やかな笑顔がかえってきた。
つい赤面してしまうぐらい穏やかな笑顔。
「じゃ、僕先に戻って準備してますね」
「後で行くよ」
背中でアスランの声を聞きながら一人先に食堂を離れた。
この切ない気持ちを押さえるために。
僕は気付いているんですよアスラン。
僕に向けられる笑顔。でもその瞳の奥では僕を観てないこと。
アスランの気持ちは他の人にあること。

部屋に戻り、お湯を沸かしながらふとゴミ箱に目をやる。
そこには割れたカップが一つ。
それを手にしながら失笑が漏れる。
僕は代わり、なんですよね…。
この割れたカップと一緒。
割れたら新しいモノと交換される、取り替えの利くSubstitute

ふと頭をよぎる名前がある。

『キラ』

どんな人なのかもわからないけど、時折アスランの寝言に出てくる名前。
僕はその『キラ』って奴の代わりなんですよね?

そんなことぐらい。

―――わかっている。

偽りの愛でもいい。
あなたの傍にいられるのらなら…。

準備したアスラン専用のカップを手に取るとそっと口付けた。

いつか僕の想いとアスランの想いが交わる日が来る様にと願いを込めて…。


END20031216



▼悲哀大好きです(>w<)!ニコには悪いけど、報われない恋愛最高!!


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