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 ふと夜中に目が覚めた。
 隣人の規則正しく揺れる銀髪に触れ、その下に隠れる傷に軽くキスを落とす。そのまま起こさないようゆっくりとベットを抜けて、引き出しから取り出しタバコを胸元にしまうと扉の自動開閉装置を手動運転に切り替え、音を立てずに外へ出た。
 時計の針は頂上付近を下っているそんな時刻。


 砂漠の夜は冷える。
 上着を羽織り、口に銜えたタバコに火をつけると、煙は風に乗って空へと溶けていった。その先に輝く月は大きく、優しい光を乾いた砂漠の大地を照らす。
『どう?慣れた?』

 吐き出した煙を照らす月明かりに、忘れかけていた胸の痛みも照らされて、一人の先輩の顔が浮かび軽笑が漏れる。
───この気持ちはこの月明かりのせい。


■□■□■□■


 その日は連日のハードな演習のせいか同室のイザークも早めに就寝してしまい、自分だけなかなか寝付けないでいた。暇を持て合わせた俺の足は灯かりの消えた談話室へと向かった。
 そしてそこには奴がいた。
「お、ディアッカも夜のお勤め帰りか?」
 手にしたタバコに火を点けながら、いつもの軽い乗りの笑顔を振りまく先輩。
「ミゲル…センパイ」
「ミゲルでいいよ。どう?軍の生活には慣れた?」
 入り口で立ち尽している俺に隣に来いとばかりに目線を投げかける。
「まぁ、ほどほどに」
 差し出されたタバコに火を点けようと顔を上げた瞬間、目に入った映像に釘付けになった。
「綺麗だろ?」
「これって」
「月だよ。今はナチュラルたちの基地だけど、けっこうこうしてみると綺麗なんだぜ」
 大型モニターに映し出された月は圧巻で、懐かしさを覚える美しさだった。
「昔の俺達のご先祖様たちはココに行くことですら大変だったのにな。今じゃ俺やお前みたいなヒヨッコでも行けちまう。まぁー上陸するとなるとまた話しは別だけどな」
 おどけた感じで話すミゲルの口元から吐き出される煙はどこか寂しげに室内に溶ける。
「なに物干しそうな顔してるんだよ」
 口に咥えたタバコを取られ、顔を覗きこまれたと思った次の瞬間には、頬にミゲルのマツゲが当たって…って!?
「ばっ」
 唇に軽くミゲルの舌先が触れた。
「お前はたばこよりこっちが欲しいんだろ」
 ミゲルはぺろりと口元を舐めながら再び顔を近づけてきた。
「嫌なら逃げな」
 そして唇が合わさる。
 もう一度合わさった唇から染みるタバコの味に頭の隅からしびれを感じた。
「んっ、ん」
「なに?立ってられない?」
 気付くとそのまま下半身が露呈されて後ろに指があてがわれて、
「ほら、腰あげて」
「ん、っ、あっ」
 身体の奥で熱を感じそのまま果てた。
「実は結構溜まってた?」
「ばっかやぁ…」
 白濁を受けとめた手を眺めているミゲルを一発殴ろうと顔を上げると、その横顔はやけに寂しそうで気づいたら抱きしめていた。
「?!」
「なんで面してんだよ」
 優しいのに寂しそうなミゲルの顔。俺を通して誰かを見てる。そんな顔。
「いいぜ。代わりで」
「…サンキュ」
 どうしてそんな言葉が出たのか、自分でも分からない。ただ、ミゲルに笑って欲しかった。それだけ。
 そして、ミゲルは優しく、激しくて、だけどそれらは俺に向けられたものでないと思うと何故か胸が痛んだ。


■□■□■□■


「おい、ディアッカ。貴様そんな所でなにしてる」
「…イザーク」
 呼ばれてふと我に返ると、後ろに寝起きで不機嫌そうなイザークが睨んでいた。
「ちょっと一服。お前も吸う?」
「いらん!」
「待てって」
 踵を返して室内へ戻ろうとするイザークの手を引っ張り、後ろから冷たい身体を抱きしめる。足元は裸足で上着も着てきてない。起きて隣にいない俺を心配して探してくれたのが容易に想像についたから。
「あいかわらず冷たいな。これ着れよ」
「いらん」
 上着を着せようとすると腕の中で銀色の髪が揺れる。
「くす。いじっぱり」
「うるさい!それ吸ったらとっとと部屋に戻るぞ!」
「ああでももう少しこのままいようぜ。イザークの身体が暖まるまで」
「なっ」
「上着のかわりさ」
 にこっと笑うとイザークは照れたように顔を赤らめそっぽを向く。

 な、ミゲル。
 今の俺に大切な宝を抱いたまま、立ち昇る煙を追いかけながら空に話かける。
いつまでも晴れぬ思いと胸の痛みを。

 紫煙は宇宙に溶け、想い出は心に溶け染み渡る。
 そして月明かりは今日も俺たちを照らしてくれる。
 優しく、暖かく。
 あいつの眼差しの様に。


END20040930



▼約9ヶ月振りの新作。。
 デキはどうあれ今回とっても安産。すぽっと産まれました(笑)
『Only the love survive(access)』聴いて、中秋の名月な話をしたらこうね。
【ここから君を見ている】と【胸に気づいた痛みを】

の歌詞が頭のなかでぐるぐる回ってきづいたらこんなんなってました(^^;)


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「貴様ぁ!なぜお前だけ!!」
毎朝、食堂で繰り広げられる朝の日課。
朝から大声でわめくイザークに、それを制止するディアッカ。
そして…。
「あ、アスラン。お早ようございます」
「おはよう、ニコル」
毎朝この騒ぎに巻き込まれるアスラン。
「イザークも毎朝よくこりませんね」
僕の隣に腰を降ろしたアスランは、まだ後ろで騒いでイザークを無視してフォークを手にした。「ほんとに、な。はぁー」
「アスランも大変ですね…」
隣から聞こえる重いため息に、苦笑するしかない。
「今日は何につっかかってきたんですか?」
「ん?いつも通り、くだらないことさ。ほら」
そう言って差し出されたアスランの皿には黄色い固体が二つ。
「アスランのおかずだけ卵焼きなんですね」
今日の献立は目玉焼きのはずなのに、なぜかアスランだけ違っていた。
むろん、僕や他の人の皿には目玉焼き。
「多分卵割るの失敗したんだろう」
普通に推察すればそうなのだろうけど、その卵焼き、よくよく見ると中にはチーズが、生地は卵だけでは出せない色と艶。そして極めつけは上にかかっているケチャップ。どう見ても軍の食堂では出なそうな、トマトの形の残るケチャップ。
あの食堂の女性はアスランに特別な想いがあるのだろう。イザークが怒ってるのはそんな女性の想いに応える以前、まったく気づかないアスランの鈍感さに腹を立てているんだろう。
「そう、そう、アスラン。家からおいしい紅茶送られてきたんですよ。よかったら後で部屋に飲みにきませんか?」
「ああ、そうだな。食事の後にでもよせてもらうよ」
鈍感なアスランも、僕の誘いに先程までの険しい顔が一変して穏やかな笑顔がかえってきた。
つい赤面してしまうぐらい穏やかな笑顔。
「じゃ、僕先に戻って準備してますね」
「後で行くよ」
背中でアスランの声を聞きながら一人先に食堂を離れた。
この切ない気持ちを押さえるために。
僕は気付いているんですよアスラン。
僕に向けられる笑顔。でもその瞳の奥では僕を観てないこと。
アスランの気持ちは他の人にあること。

部屋に戻り、お湯を沸かしながらふとゴミ箱に目をやる。
そこには割れたカップが一つ。
それを手にしながら失笑が漏れる。
僕は代わり、なんですよね…。
この割れたカップと一緒。
割れたら新しいモノと交換される、取り替えの利くSubstitute

ふと頭をよぎる名前がある。

『キラ』

どんな人なのかもわからないけど、時折アスランの寝言に出てくる名前。
僕はその『キラ』って奴の代わりなんですよね?

そんなことぐらい。

―――わかっている。

偽りの愛でもいい。
あなたの傍にいられるのらなら…。

準備したアスラン専用のカップを手に取るとそっと口付けた。

いつか僕の想いとアスランの想いが交わる日が来る様にと願いを込めて…。


END20031216



▼悲哀大好きです(>w<)!ニコには悪いけど、報われない恋愛最高!!


雨上がり、外に架かる七色の虹。
「ねぇアスラン。虹の下に行ってみない?」
「え?」
アスランは読んでいた雑誌を床に置き、窓際に立つ僕の肩を抱きながら一緒に外の虹を見た。
「そこになにかあるのか?」
「ラクスから聞いたことがあるんだけど、虹の下には幸せがあるんだって」
「『幸せ』ね…。だったら俺は行かなくても平気だな」
「どうして?」
「虹の下にいかなくても俺の【幸せ】はココにあるから…」
アスランに抱き締められながらもう一度見た虹。
「あ!」
さっきまで一本だった橋が、今は二本寄り添うように架かっている。
「僕たちみたいだね。」
「ああ」

虹の先はわからない。けど、行き先は二本一緒。
同じ未来に向って。


END20031209



▼キラの一人のろけ(笑)


遠い昔の武人の言葉に
『背中を預ける』

とゆう言葉がある。
背中を敵に見せるのは戦場では【死】を意味する。
その背中を預ける人間はよっぽど『信頼』した人間。

会話と一緒に背中から伝わるキラの鼓動。

『とくん、とくん』

規則正しく、そして鼓動はぬくもりへと変わる。
背中を『預ける』、『預けられる』
そんな信頼と共にある安らぎ。
この二つの鼓動、これからもこの背中で感じたい。


END20031208



▼アスランの一人のろけ(笑)


一人、艦内の談話室から外を眺める。
見えるものは暗い宇宙。
少し前まで俺はココでナチュラルに加担するキラと戦っていた。
自分に疑問を抱きながら…。

そして今はキラと共に戦うためにここにいる。
父上を止める為に…。

「アスラン」
ふいに呼ばれて我に返り、振り向いた先にはハロを連れたラクスが立っていた。
「何を見ていたんですか?」
「外を…見てました。」
微笑みながらラクスも一緒に暗闇の宇宙を眺めた。
「アスランは今、『幸せ』ですか?」
「えっ!?」
「こんな戦火の中、おかしな質問かもしれませんが。」
突然の問いかけに頭を過ぎる二文字。
「…幸せ、なのですね。」
ラクスが幸せそうに笑いながら続ける。
「最近のアスラン幸せそうに笑いますよ。軍にいた時とは大違い。特に誰かさんを呼ぶ時など…」
「そ、そんな、キラはっ…!」
「くす。私は一言も『キラ』とは言ってませんよ」
「あっ…」
「うわさをすれば…ですわ」
くすくすと楽しそうに笑うラクスの視線の先から歩いてくる人影。
「今の顔、写真にでも撮って差上げたいぐらいですわ。それでは、私はこれで。」
そう言ってラクスは談話室をあとにした。
そして目の前には、先ほどのラクスの問いかけに頭に浮かんだ2文字。
「キラ」
俺はキラの名前を呼びながら腕を広げた。
この腕に飛び込んでくるキラを抱きしめるために大きく。
「アスラン」
腕の中で俺の名前を呼ぶキラに優しく口付けて、ラクスの言葉を思い出す。

『幸せ、なのですね』

ああ。幸せだよ。
「どうかしたの?」
「いや、なんでもないよ。キラ」
腕の中のキラにもう一度口付け、呼ぶだけで心まで暖かくなれる二文字の『幸せ』を抱きしめた。


END20031206



▼ほのぼの甘々で幸せに浸るキラを書きたかったの。。。



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