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日中の強い日差しも和らぎ、虫の鳴き声が秋訪れを知らせるそんな夕時。
家路へ急ぐ秀麗の目にふと止まったものがあった。
数年前、「匿名希望」と名乗る送り主から文字通り山になって送られてきた赤い花。


花言葉は「想うはあなた一人」・「また会う日を楽しみに」そして「悲しい思い出」───。


秀麗は当時を思い出してくすりと微笑むと再び家路へ急いだ。
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 ふと立ち止まる。
 そして、空を見上げる。

 夏の熱い日差しと、地面から照り返される熱風も数日前から穏やかに変わり、
秋の足音が聞こえる様になった。
 「早いな・・・」
 幾分近くなった空の高さに過ぎ去る夏を感じながら、その早さに自分の過去を重ね少し自嘲気味に笑う。
 ふと手に握られた花菖蒲の剣に目を向けると、主上や絳攸の顔に続いて三人の兄たちの顔が浮かぶ。

───約束の時は近い。

 迷いを打ち消すかの様に柄を一度強く握り締め、深く深呼吸をしてもう一度空を見上げた。
 池の花菖蒲は姿を消し、曼珠沙華が今か今かと鮮血の様な花弁を開く準備をしていた。
 真夏の太陽をたくさん浴びた向日葵が、未来の為に地面に顔を向ける。そんな季節。

「お、あの雲秋刀魚みいたいだなー!こっちはいわしか?」
「燕青、さっきから食べ物の話ばかりね」
「だってよー!」
 くすくすと笑う秀麗の隣で燕青は腹に手を当てると腹の虫が自己主張を始めた。
「今月はかなり余裕があるから今日はご飯特盛にしてあげる!」
「さすが!姫さん!!大好きだぜ!!」
 初秋の匂いのするそんな夕暮れの一時。


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